幕末の維新志士「人斬り抜刀斉」と呼ばれた剣豪が、新しくなる時代を迎えて自分の生き方を考えていく時代物の秀作。

人斬りのイメージと似つかわしくないイケメンな剣豪の、ちょっと間の抜けた
日常シーンと、目の前の敵をなぎ倒すアクションシーンのギャップのおもしろさももちろんあるが、それ以上にストーリー全体を通して語られる、作者の考える「生きるとは?」なにかという問いに対する、意義や思想がセリフの中にちりばめられていて興味深い。

主人公の剣豪がもっとも頼りにしていた天才刀鍛冶は、自分の作り続ける刀が
殺人に使われること、またそのことで実の息子からは、自分の仕事に理解を得られなかったことから辞世の句を残す。

「我を斬り 刃鍛えて 幾星霜 子に恨まれんとも 孫の世の為」

ストーリーの中で、その刀鍛冶親子の間にある溝は
解消されるのだが、この言葉の意味は、いまの日本にも必要な、また通用する
普遍的なメッセージ性を持っている。

そんないつの時代にも通ずるような言葉が随所に見られるのも、この作品の魅力だと思う。